保育所等訪問支援とは

保育所等訪問支援とは、お子さんが集団生活に適応できるように、お子さんの様子やその集団の環境に応じて、直接的に関わったり、環境や関わりの工夫を一緒に考えていくものです。
支援内容に関しては、保護者の要望だけでなく、所属先の担当の先生とも話して決めていきます。

直接支援

お子さんの対人関係に関する困り感を紐解き関わり方をサポート

自閉症やADHDなど発達障がいの特性があるお子さんは、周囲に対して理解されにくい対人関係に関する困り感を背負っています。 私たちは、そのようなお子さんが誰と、どこで、何について、どのような困り感を持つのかを解き明かし、彼らが望むより良い社会との接し方をサポートします。

困り感を理解することで、お子さん自身だけでなく、先生や友だち、親との接し方を互いが知り、困りごとを減らすきっかけの一つになるのです。 誤解や困惑から生まれる”わからない”ことが原因で起こるトラブルについて、私たちは専門的な知識だけでなく年間600件を超える経験から、より効果的な支援に繋げることができます。

例えば、否定的な言葉を避け、子どもの行動を待ち、肯定的にフィードバックする声掛け方法や、短いフレーズで伝えるなどの方法を取り入れています。 これは、子どもの成長段階に応じた直接的な支援の一例です。

私たちは福祉の専門家として先生や保護者と異なる視点をもつことで、お子さんを多角的に見れることで困り感の原因を紐解き解決への糸口を見つけることができます。 あらゆる視点の意見を取り入れ対人関係による負担の軽減し、お子さんの望む関り方に繋げていくサポートをいたします。

間接支援

集団生活においての困りごとを解決する提案

授業中に走りだす子、何か気に入らないことがあると癇癪を起こしてしまう子など、集団生活における困難は多種多様です。 それに加えて、こうしたトラブルが発生したときに対応に頭を悩ませている先生も多くいます。

さまざまな困り感をもつお子さんを理解することが、私たちの活動の出発点です。 目の前にいるお子さんに向き合い望む生活を送るために最も大切にしていることが“他者理解”であり、その背景にあるお子さんの困り感を知ることで有効な支援を提案することができます。 集団生活においてお互いを理解し受け止めることが最も重要だと確信しています。

例えば、集団活動に集中できないお子さんの場合、話し言葉では今からやる活動の意味を理解できていないことがあり、イラストや文字を使いながら説明することも有効な対策の一つです。 また、パニックを起こして活動に参加できなくなるお子さんの場合、何が起こるかわからない状況を受け入れることが難しいことがあり、事前にスケジュールを提示したり、活動の写真を見せて準備するとよいでしょう。

“発達障がい”と一括りにされることが多いですが、実際には個々のニーズが異なります。 そのため、子どもたちに合わせた環境整備の提案と、先生たちと共にその環境を実現することが私たちの任務です。

環境が少しずつ整っていくことで、行事活動や日々の授業の負担は軽減され、子どもたちが望む集団生活へ繋げることができます。

具体的な事例

Aさんの事例

  • 小学3年生
  • ADHD
  • 通常学級に在籍

先生に伺ったところ、「みんなで一緒に活動している時に、ルールを守れないことが多くてよくトラブルになってしまいます。 友だちからもよく注意をされていますが、余計に落ち着かなくなってしまうんです。イライラすると、怒鳴ったり手が出たりします。 何度もそう言うことはしないように約束しているんですが、なかなか言うことを聞きません。」というものでした。

観察

朝の会や授業の様子の観察、お友だちや先生とのやりとりの観察

  • 「ルールを守れない」の背景に、本人の衝動性・多動性
  • 先生やお友だちの話したことが捉えにくい特性
  • 主体的に活動(係や授業)に参加できている場面もあり

目標

まず本人の気持ちが安定し、落ち着いて係の仕事ができること。 具体的には、固定タスクかつ本人のできることが多い時間帯で係の仕事を中心にアプローチし自信をつける。

Aさんへの支援例

  • 朝の会でやることを事前にリストアップして見える化しておく
  • 先生が声掛けをしやすい位置に机を配置する
  • 直前に先生が短く端的に声掛けを行う
  • うまくできたらみんなの前で褒める
  • その他:クールダウン方法も事前に話し合っておく

直接支援

反応の観察・クールダウンの方法提案・うまく気持ちに対処するための支援。

間接支援

席の配置を調整・自己肯定感や発達特性を踏まえた効果的な声掛けについての情報提供。

先生へのフィードバック

先生から見た本人の様子を伺いつつ、本人の苦手なところ、できているところを一緒に整理していきました。 また、現状で先生が適切に関わっておられる部分を共有し、その部分を中心に本人のできる活動を広げていくための方法を検討しました。 その結果、できることが増えるに伴い、トラブルも減り落ち着いた気持ちでやり取りできる場面が増えるでしょう。

保護者へのフィードバック

トラブルへの対処方法を説明するとともに、Aさんのできている部分や成長した部分を訪問ごとに共有し、家庭でもそれを褒めていただくようにお願いしました。 徐々に家庭でも落ち着いた気持ちで過ごし、積極的にお手伝いをする場面が多くなっていくでしょう。

Bさんの事例

  • 年長 ・自閉症スペクトラム
  • ADHD

先生に伺ったところ、「活動の時間に座って説明を聞けず、すぐに席を離れてしまいます。 座る場所がわかりやすいように椅子を置いていますが、すぐに走って離れてしまいます。 いつも決まった時間にお気に入りのおもちゃで遊ぶのですが、そのルーティンが崩れてしまうと泣いて癇癪を起こし、後の園活動に参加できなくなります。」ということでした。

観察

朝の会や活動の場面の観察など

  • 本人のルーティンが崩れるとパニックを起こしている
  • 常に動いているわけではなく、先生の話に注意を向けることができず、周りの視覚的な刺激に気を取られている
  • 気になるものが見えると衝動的に移動してしまう

目標

パニックの時間が減り、登園から朝の活動まで混乱なく参加できること。

Bさんへの支援例

  • 朝の流れを前もって絵や写真で確認し、自分の好きな遊びができるタイミングを理解できるようにする
  • パニックを起こした時には、無理に次の活動に移らせようとせず、一対一で受け止め、収まるまで待つなど、対応方法を先生と共有する
  • 視覚的な刺激を避けるために、部屋の整理をする
  • 先生の近くで説明を受けるようにしたり、今からやる活動を具体物に説明したりして、本人が理解しやすい工夫をする

直接支援

絵や写真などの提示。視覚刺激を減らした上で具体物と端的な声掛けで活動の説明を行うなど。

間接支援

情報共有からパニックや活動参加の難しさの原因を検討。パニックの背景やその支援方法の共有、環境調整の検討。本人に伝わりやすい声掛け・提示の方法などの共有。

先生へのフィードバック

もともとBさんの様子を細かく観察してくださっていたので、観察内容を擦り合わせた後は、Bさんの発達特性や伝わりにくさへの対応方法を行わせていただきました。 その結果、パニックになることが減り、スムーズに園生活を楽しむことができるでしょう。

保護者へのフィードバック

家でも同様のパニックがあったため、ご家庭の状況に合わせたアドバイスを行わせていただきました。 原因と対処方がわかることで家でのパニックも減るでしょう。